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技術日記⑫ in 札幌

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技術日記⑫ in 札幌

技術日記⑫ in 札幌

2024/09/22

みなさまこんにちは~。クレモナ出張を控えそわそわしているIです☔

札幌店から、読み応えのあるお話が届いております♪

じっくりとどうぞ!

「膠」

 

 

 

 皆さんタイトル読めましたでしょうか? 難しい漢字ですよね。

「にかわ」と読みます。
 ヴァイオリン修理や製作においては接着剤として使用されています。

天然の接着剤で、動物の皮、骨、腱などを煮出して抽出されたものを濃縮、凝固させて作られます。
接着剤としての歴史は古く、古代エジプトでは紀元前3000年頃から、中国では紀元前4000年頃から使用されていたとされています。日本でも奈良時代から記録があり、「皮を煮る」から「煮皮」→「膠」と変化していったようです。
 膠は合成接着剤のような化学物質が発生せず、また生分解性があるためとてもエコな接着剤となっております。 

 

それでは使い方を見ていきましょう!

通常時は固形物となっており、この状態であれば長期保管ができます。

小瓶などの容器に移し、水を加えてしばらく待ちます。


十分に膨潤したら湯煎し熱を加えます。使用環境にもよりますが、60〜80°の温度で温めます。熱しすぎると成分が壊れて接着力が弱くなるので注意が必要です。

 

 

膠がゲル状になったら接着剤としての準備は完了です。接着する物の両面に膠を塗りクランプする事で強力に接着されます。


使い終った後冷やすと固まり、再加熱するとまたゲル状となり再度使用する事ができます。

しかし、一度水分を加えたものは長期保管できません。

もともとが動物から抽出したタンパク質なので、腐って強烈な臭いを放つ上に接着力が無くなってしまいます。

棚の隙間から、いつ使用した膠かわからない物が出てきたら恐怖でしかないので、早めに使い切るか処分してしまいます!

科学が発展し、あらゆる用途に応じられるように化学合成された接着剤がたくさんある中で、ヴァイオリン製作、修理において膠は現役の接着剤であり続けています。それは、化学合成された接着剤に引けをとらない強力な接着力を持ちながら、剥がせるという特質をもっているからです。


 ヴァイオリン修理では、時として表板や裏板を剥がして内部に補強入れたり、割れを接着したりします。このような時に “剥がす事を考慮していない” 接着剤が使用されていますと、無理やりこじ開ける事になります。そうすると木材の繊維が剥がれて楽器を傷めてしまいます。修理するつもりが壊してしまう事になりますので本末転倒ですね。


 “冷やせば固まり、熱すれば溶ける” このような特性を持つ為に、強力に接着でき、安全に剥がす事ができるのです。それが、ヴァイオリン製作、修理において膠が使用され続けている理由となり、ヴァイオリンが何百年と使用できる一つの要因ともなっています。 しかしながら完璧で万能な物は存在しないようで、欠点といいますか、注意が必要な事があります。それは、剥がせるという特性がある為に意図しない時に剥がれてしまう事があるといことです。


 高温な状況では剥がれやすくなりますので、真夏の車中にエアコンもつけずに放置してしまいますと最悪バラバラになってしまいます。また、衝撃で剥がれることもあります。ケースごと倒してしまったりですとか、楽器を落としてしまったという場合、剥がれている事がありますので、自己判断せず職人に診てもらうようにして下さいね。
 
 また、膠にはそもそも接着できない物質もあります。そもそも“接着”とはアンカー効果、ファンデルワールス結合など……いえ、やめておきましょう。 

 

今回は“膠”についてでした!

 

次回の技術日記もどうぞお楽しみに!

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