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どんなジャンルの音楽も、今やスマホとイヤホンで気楽に楽しめる時代となりました。レコード、ラジオ・テレビからCD、LD、DVDと経て、配信やインターネット中継まで映像や音楽の楽しみ方の変遷は著しいものですね。今後はVRなどでコンサートホールで聴いているかのような体感もできる時代が予想され、わざわざコンサートに足を運ばなくとも十分な臨場感を味わえると思う方も増えることでしょう。

でも、音楽ファンはどうして手間をかけお金を払ってコンサートに行くのでしょうか。それは生身の人間が間近にいて、演奏家として真剣に楽器を弾いたり、歌っていることに共感できるということに醍醐味があるからです。ライブ感というのは、まさに演奏家の呼吸を感じることで、レコーディングなど幾度も繰り返して完成させた音響作品と違い、ステージの軋み音、靴音のほか会場の雑音や時には演奏の乱れさえも、そこに人間が作り上げる超越的な雰囲気、生々しさや新鮮さを感じとることができるのです。また、スピーカーなど音響機器を通した音ではなく、アコースティックな空気の振動音は、人の耳から全身に伝わり心を打つものです。演奏家の表情に引き込まれながら表現される音楽を「その場」で聴くということは大きな意味があるのです。

クラシック音楽は長くて疲れる、堅苦しく気取ってるとか、オタク的で少数派だとかちょっと特別な目で見られることがあります。人気アーティストらのポップスコンサートは何万枚というチケットがあっという間に完売になるけれど、それに比べてクラシック音楽は演奏者側からしても概してチケットを売ることに一苦労するジャンルといえます。そもそもクラシックと言っても長い長い歴史も作曲家の国籍もまちまちで、本来はその中にもたくさんの枝別れのジャンルがあるものの、どうやら雑然と一括りにされたうえに日本では少し敬遠気味にされる存在といえば否定はできないでしょう。
これは、特に音楽教育の問題もあり、ヴァイオリンやピアノを習う子どもが身近に案外多く、国際的な演奏家がたくさん活躍している一方で、聴衆が育たないという問題を孕んでいます。学校の授業や、鑑賞会だけではなかなか楽しみ方や本当の良さを子どもたちが理解するには十分ではないのかもしれません。

ところが、実はクラシック音楽はCMや映画音楽に幅広く取り入れられ、自然に耳にしているジャンルであることも事実です。検索エンジンで「クラシック音楽 CM」「クラシック 映画音楽」と入力すれば、有名な楽曲のリストと企業や商品の名前、映画タイトルがずらり。「ああ、あの曲か」と改めて認識することができます。「え、ポップスだと思ってたけど、これクラシックなの？」ということも。意外と身近なクラシック、まずはよく聴く曲、馴染みの曲をとっかかりにして、メロディーを口ずさんでみてはいかがでしょうか。そしてその曲のタイトル、作曲家、時代背景、編成などちょっと調べてみるとよりクラシックが身近な存在になるかもしれません。

最近は堅苦しい雰囲気を取り除くために、ライトなクラシックや、小品集、ポップスをアレンジしてヴァイオリンやピアノで演奏したりと、プログラムにも配慮する演奏家の方々も多くいらっしゃいます。また、演奏家も大仰なドレスやタキシードを着込んでいた時代から脱却し、最近はややカジュアルな服装になってきています。まずは重々しく考えず気軽に普段着で出かけてみましょう。出かければ、きっと心を打つもの、勇気がわくもの、ウキウキするもの、覇気を持てるもの、心安らぐもの、、、色々な音楽に出会えることでしょう。演奏会ではどうも睡魔に勝てず寝てしまうという方も周りに迷惑さえかけなければ、それも心地よい音楽を聴いた証と言えるかもしれません。でも、できれば音やメロディーに耳を傾け、会場の緊張感、周囲の人たちも集中して聴いているという雰囲気を共有し、拍手喝采をする時の高揚感を味わっていただきたいと思います。